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建設ICT読本2022

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2. クラウドコンピューティングの普及について

インターネットを通して各種の情報サービスを利用するクラウドコンピューティングの普及が急速に進んでいる。図2-1に示すように各企業は自社でパッケージ購入、または独自にシステムを開発し自社内のハードウェア環境にて運用するのが一般的であった。クラウドコンピューティングは、クラウド環境(インターネット環境)でコンピューティングサービス(サーバ、ストレージ、ネットワーク、データベース、ソフトウェアなど)を利用することを意味しており、一般的に「SaaS」「PaaS」「IaaS」という以下の3つに分類される。
・SaaS(サース:Software as a Service)
 インターネット経由での、電子メール、グループウェア等のソフトウェア機能の提供を行うサービス。以前は、ASP(Application Service Provider)などと呼ばれていた。
・PaaS(パース:Platform as a Service)
 インターネット経由での仮想化されたアプリケーションサーバやデータベースなどアプリケーション実行用のプラットフォーム機能の提供を行うサービス。
・IaaS(イアース:Infrastructure as a Service)
 インターネット経由で、デスクトップ仮想化や共有ディスクなどハードウェアやインフラ機能の提供を行うサービス。HaaS(Hardware as a Service)と呼ばれることもある。

図2-1 クラウドコンピューティングの内容
図2-1 クラウドコンピューティングの概要

建設業でもクラウドコンピューティングの利用は進んでいる。IaaSの事例では従来の自社内サーバを撤廃してIaaSサービス事業者のサーバや通信機器を借りて自社システムを移行し運用する形式である。サーバや通信機器の管理業務が不要となり、担当者は他の業務を行うことができる。
PaaSの事例として自社のホームページ提供環境をPaaSにて行うものである。ホームページのコンテンツのみ自社で作成しPaaS事業者の環境よりホームページを公開する形式である。外部からの攻撃等々のセキュリティ対策ツールを含めてサービスを受けることで、セキュリティレベルを強化することができる。
SaaSは以前からASPとしてサービスされている形態であり、業務用ソフトウェアをインターネット経由で提供するサービスである。国土交通省のCALS/EC工事情報共有システムはSaaSにて展開されている。工事ごとに工期の期間中SaaS事業者と契約して発注者と受注者が利用する形式となっている。また、企業では電子メールやグループウェアなどのシステムをSaaSによって運用している事例が非常に多い。
クラウドコンピューティングのメリットは短期間で導入できる、必要なサービスを利用してその分について料金を支払うことができる、担当者が運用管理などの業務から開放される、コスト削減につながる等がある。また、課題としては、通信回線に障害が起こると利用できない、セキュリティ面で不安がある等があるが、大企業から中小企業までクラウドコンピューティングを利用する企業は増えており、その依存度は増してきている。
建設現場の業務改善においても、協力会社が元請会社へ提出する労務安全に関わるシステムや鉄筋の配筋検査を効率よく行うためのシステムがSaaSとしてサービスされている。有期のプロジェクトである建設現場としては、月額料金等でサービスを受けることができるので大変有効な仕組みであり、今後いろいろなサービスが提供され、それらの利用が促進されることが予想される。

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