HOME>>NEWS>>建設業再生プログラム

東建「建設産業再生プログラム」

2000年7月
社団法人 東京建設業協会
建設産業再生プログラム研究会


第4章 建設産業行政に対する要望

 中堅・中小建設企業の最大の特徴は、それぞれの地域社会、行政、生活者に密着・融合した地元産業企業としての性格を有しているところにある。
 この特徴は今後も変わらないはずであり、むしろその特徴をより鮮明にして、企業経営活動を通じた地域社会への貢献を考えていくことにより、地域住民の信頼感や親近感を高めていくことが肝要である。
 その基本理念は、安全で快適な地域の特色を活かしたより個性的な地域づくり、町づくりを、行政、住民と一緒に実現していくことであり、中堅・中小建設企業の持っている技術やアイデアや人材を、積極的に提供していく姿勢である。
 そのためには、中堅・中小建設企業の基本理念を行政機関に理解してもらうために、地域貢献につながる企業情報、技術情報、アイデアなどを行政機関に提供し、「地元企業優先」が「地元住民利益」につながることを立証していく必要がある。
 また、行政機関には、地元の中堅・中小建設企業を工事の受注者、施工者としてだけでなく、地域住民企業、企業市民としてとらえてもらうよう努力していかなければならない。
 さらに、中小企業保護育成の行政策にのみ依存する体質を改め、中堅・中小建設企業自ら経営体質、経営意識を改革し、研鑚、工夫の合理化、人材の育成と効率的な配置など、無駄のない効率的な企業体質、高収益体質をつくることが急務である。
 不良不適格業者の排除は、建設業行政の課題のひとつになっているが、不良不適格業者が活動できない市場を、建設企業自身が形成する努力も大切である。
 そうした中堅・中小建設企業の自助努力を推進していくことを前提として、行政機関に次のような要望を行っていく。

〇適正な中小企業育成の強化
 過度な中小企業保護政策や地元企業優先を望むものではないが、地域経済の下支え、雇用の安定などに果たしている地元の中小企業の役割は大きく、適正な中小企業育成策は非常に重要であり、中小企業の健全な発展を明確にした行政と指導をお願いする。
 中小企業自身が、技術と経営に優れた企業を目指した努力を行っていくことはいうまでもない。

〇地域貢献度を重視した企業評価
 地域住民や企業と連携した地域づくりへの参加、災害、緊急時の地域活動など地元の建設企業としての貢献度を適正に評価してもらい、それを経営事項審査や地域要件に加味する仕組みを強化することをお願いする。

〇地域計画への参加要請と支援
 地域づくりの計画段階から、より広範囲の専門家やユーザーの知識や意見を取り入れるインフラ整備の方向になりつつあり、地元建設企業の有している技術やアイデアを積極的に活用してもらうようお願いする。
 また、NPO、NGOなどの組織への地元建設企業の参加と活動を、行政サイドからも支援、支持してもらうようお願いする。

〇地元建設企業の自主性の積極活用
 行政の規制緩和による企業の能力活用の機会と領域を拡大してもらうようお願いする。
 現行の規則や仕組みを緩和することによって、地域づくりのプロセスの効率化や民間企業の能力や創意工夫を有効に活かせる余地がまだ多く残されており、企業の自主性をより活用できる規制緩和を期待する。
 その場合に、企業の論理、受注者の論理が先行しないための基本となる行政規制は当然必要であり、その規制を明確にして、他の領域分野の規制はできるだけ緩めてもらう。

〇行政機構の効率機能化
 都、区、市、町、村、さらに担当部局の行政機構の権限、業務をできるだけ下部組織に移譲し、それぞれの組織に主体性を持たせた効率的な行政の仕組みにしてもらうことをお願いする。
 また、行政組織の運営手法や意識に、企業経営的な発想や手法を積極的に取り入れてもらい、必要に応じた人材交流も行ってもらうようお願いする。

〇リフォーム需要への支援
 今後市場の拡大が予想されるリフォーム市場、特に公共施設のリフォーム工事に、地元中小建設企業の積極活用を図ってもらうようお願いする。
 そのために中小建設企業自身が、リフォーム技術や工法の研究、高度化の努力を行うのはもちろんのこと、建設物の劣化診断技術やリフォーム計画立案などソフトな技術の充実も経営課題のひとつにしていく必要がある。

INDEX

はじめに

第1章 首都としての地域特性と建設投資展望

第2章 首都圏の建設産業構造変化と展望

第3章 中堅・中小建設企業の経営戦略のための指針

第4章 建設産業行政に対する要望

おわりに(地域とともに)


→おわりに