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東建「建設産業再生プログラム」

2000年7月
社団法人 東京建設業協会
建設産業再生プログラム研究会


はじめに

 この「建設産業再生プログラム」は、東京建設業協会の会員の大半を占める中堅・中小建設企業を主たる対象として検討作成したものです。
 対象となる中堅・中小建設企業の範囲は、資本金、従業員数、売上高などいくつかの指標によって、おのずから定まってきますが、当プログラムではあえて、中堅・中小建設企業の定義を、数値的に固定、明示していません。
 また、中堅・中小建設企業を対象としていても、大手建設企業を全く度外視するというスタンスに立っているわけでもありません。基本的なスタンスは、今後の首都づくり、地域づくりにおいて、大手・中堅・中小企業を問わず、東京地区の建設業界がどのようにその役割を果たしていくべきか、そのために首都の建設業全体が、そしてそれぞれの企業がどう進路を定め、努力と改革を行っていくべきかを見出していくことに立脚しています。
 従って、大手企業と中小企業の関係を「対立」図式でとらえずに、社会や首都の住民から支持されるいい意味での「競争」「連携」「協力」の関係としてとらえています。
 ただ、すでに昨年7月に大手建設企業を対象とした「建設産業再生プログラム」が、建設省から発表されており、また、東京建設業協会会員の圧倒的多数が中堅・中小建設企業である現実を勘案して、中堅・中小建設企業の今後の経営のあり方を探ることに主眼を置くことにしたものです。
 中堅・中小建設企業の最大の特徴は、それぞれの地域社会、行政、生活者に密着・融合した地元産業企業としての性格を有している点にあります。
 この特徴は今後も変わらないものと考えられ、むしろ、その特徴をどう活かし、地域生活者、地域行政との良好な関係をいかに高めていくかが、今後ますます要求されると考えられ、それに的確に対処していくことが、地元産業としての中堅・中小建設企業の生き残りと発展的存続につながる途であると思われます。
 従って、首都の建設業の再生は、首都・東京の都市機能の再生や拡充のゆくえと密接不可欠の関係にあり、新たな首都づくりとその仕組みによって生じる建設市場の需要展望や構造的変化やニーズの変化を見極めて、地域密着産業としての建設業がどう役割を果たしていくかを考え、それを各企業の今後の経営戦略に取り込んでいくことが大切との視点に立って、プログラムを作成しました。
 これまで建設業は、発注者が要求する品質、価格、工期を厳守して完成品を提供することで、役割を全うするとの経営理念に立ってきました。
 しかし、その理念は大きな岐路に直面しており、従来の考え方の変革を迫られつつあります。完成した建設物は、数十年間にわたって供用され、価値を生み続けるものであり、長期間にわたる「つかう側」の利益をいかに最大化できるかに、視点が移ってきたからです。
 それは、公共工事において特に顕著であり、イニシアルコストとランニングコスト、ライフサイクルコストの比較検証、費用対効果、バリュー・フォー・マネーなどの視点がクローズアップされています。
 このことは、「つくる」ことよりも、「つかう」ことにウエートを置いてインフラ投資を行う発想であり、建設業も「つかう」側の利益効率を最重視して「つくる」ことを、経営理念にしていくことが求められているといえます。
 もちろん、「つくる」側の建設業が独自でそれに対処するのではなく、発注者、納税者、地域生活者など「つかう」側と「つくる」側が知恵と情報を出し合って最適なものを計画、選択し、つくり出していくものです。
 省庁再編成によって2001年1月に誕生する国土交通省の国づくりの理念も、そこに重点が置かれています。具体的には、国(国土交通省、各地方整備局)と地方自治体の役割と責任を明確にして、個性的な地域づくりを各自治体や地域に促すことを基本にしています。
 国が主導的に立案してきたインフラ整備の権限を、できるだけ地方自治体に委譲し、アカウンタビリティー、パブリック・インボルブメントの形で、地域社会や地域生活者の意見や要望を、インフラ整備の計画立案に反映させる仕組みづくりを目指しているといえます。
 そうした社会的な仕組みが実際に動き出せば、日本の公共工事市場の構造や生産手法が大きく変化していくことは明白です。
 このような流れが浮上してきたのは、バブル経済の崩壊を契機に、日本経済が拡大基調から縮小基調への転換を余儀なくされ、国、地方自治体も財政事情の悪化の中で、より効率的な投資による、より大きな公共サービスの提供を求められたことによるもので、その意味では、日本の建設産業の21世紀はバブル崩壊と同時に始まったと見ることができます。
 しかし、その市場変化は地域密着型の中堅・中小建設企業にとって、その特徴をより有効に生かせる好機ともいえます。
 日本の建設市場の需要変化、構造変化はもはや止めようがなく、その変化にいち早く対処し、地域密着産業としての中堅・中小建設企業の存在価値と役割を明確にして、その実践と成果を全国に発信するのが、首都の建設業であるとの矜持と気概が必要です。
 この「再生プログラム」から、各会員企業がそれぞれの経営戦略と進路を考える社内会議や研修会において、経営陣と社員が一緒に検討し合う際に、あるいは地域住民との対話を深めていくためのヒントを見出していただけたら幸いです。

INDEX

はじめに

第1章 首都としての地域特性と建設投資展望

第2章 首都圏の建設産業構造変化と展望

第3章 中堅・中小建設企業の経営戦略のための指針

第4章 建設産業行政に対する要望

おわりに(地域とともに)


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