![]() |
『建設経済モデルによる建設投資の見通し(2025年10月)』をもとに作成 |
![]() |
10月8日に開かれた、関東甲信越地区の全建ブロック会議。 建設コスト増大への対応も話題の一つだった |
建設経済研究所と経済調査会は10月10日、「2026年度建設投資見通し(10月推計)」を発表した。2026年度の投資総額は名目額で前年度比5.3%増の80兆7300億円、実質額も同3.2%増の60兆432億円となった。見通しとはいえ名目80兆円台は1996年度以来、30年ぶり。名目値だけ見ると、バブル期の建設市場規模に近づきつつある。前回7月推計と比べ、名目額で1兆5200億円、実質額も3702億円増加し、政府・民間ともに堅調な投資が見込まれる。
ただし、建設投資の名目額と実質額を比べて見ると、拡大傾向が鮮明の「名目値」に対し、「実質値」は基準年である2015年度の56兆円台から2025年度見通しの58兆円台まで11年間で2兆円程度の増加にとどまっている。ちなみに、「名目値」は同様の11年間で20兆円の伸び。特に近年は、拡大する「名目値」と、伸びの鈍化が顕著な「実質値」の差が拡大。その結果、実体経済で話題の一つとなっている、「名目GDPが拡大しているのに景気回復の実感が乏しい〝名実格差″問題」が、建設投資でも明確になりつつある。
実際に市場で取り引きされている価格に基づいた「名目値」に対し、「実績値」とはある年(参照年、2015年度基準)からの物価の上昇・下落分を取り除いた値。名目値は物価が上昇するインフレや物価が下落するデフレなど物価変動の影響を受けている値のため、成長をみるときは、こうした要因を取り除いた実績値で判断することが多い。
このことを踏まえると、名目と実質の関係を現状踏まえた計算式にすると「名目値-インフレ(物価上昇)=実質値」となる。言い換えると、労務費や資機材費など建設コスト上昇分を除いたものが実質値と言える。そのなかで、名目値から実績値を引いた値、いわゆる「名実格差」が拡大傾向にある。特に近年、この名実の差額は2022年度に10兆円台だったが、その後わずか4年後の2026年度(見込み)には倍の20兆円台まで拡大している。
「名実格差」の拡大は人件費や資材などの高騰が大きな要因と見られるが一方で、この格差拡大は実質の工事量の確保が進んでいないことも示している。




