【防災特集】震災に強い都市をめざして
東京の防災施設
(東建月報9月号掲載)


首都東京の防災の砦、「東京都防災センター」がある都庁舎
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107名で会議ができる東京都防災センターの防災本部指令室
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都庁屋上のヘリポート
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東京都防災センターの中枢を担う指令情報室
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立川広域防災基地の中に建設された「東京都立川地域防災センター」
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テレビ会議もできる災害対策室(東京都立川地域防災センター)
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救援物資や医療資機材等を備蓄する倉庫(東京都立川地域防災センター)
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東京都防災センターのバックアップ機能を持つ電算機室(東京都立川地域防災セ
ンター)
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救援物資の一時集積場や荷さばき場にも使われる一時避難室(東京都立川地域防
災センター)
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東京消防庁による最初の防災教育施設「池袋防災館」
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展示・体験コーナーのほか、ミニシアターを設置した「立川防災館」
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新宿区百人町に設置された災害対策用給水施設
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武蔵野市の中学校にある備蓄倉庫
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墨田区向島の雨水利用防災施設「路地尊」を使ったバケツリレー
[写真提供/東京都]

「東京都震災対策条例」の改正ポイント

 平成7年の阪神・淡路大震災をはじめ、平成11年の台湾大地震など、都市型地震における甚大な被害は、震災に強い街づくりの重要性を改めて認識させた。首都である東京にマグニチュード7級の直下型地震が懸念されるいま、防災施設・体制のより一層の整備は最重要課題といえる。

 こうした事情を背景に、東京都は昨年12月、従来の「東京都震災予防条例」(昭和46年制定)を全面改正し、新しく「東京都震災対策条例」として今年4月から施行した。近年の都市型地震の犠牲者の多くは、地震発生直後の建物倒壊や家具の転倒が原因で発生しており、震災時に行政だけの対応では限界がある。

 そこで、行政主導の予防対策にとどまっていた旧条例を見直し、「自らの生命は自らが守る」=自助、「自分たちの街は自分たちで守る」=共助の二つの考え方を基本に、新条例は「都民や事業者の責務と役割の強化」、「自主的震災対策活動の活性化と助け合いの仕組みづくり」、「応急・復興対策の見直しと強化」、「地震に強い街づくりの一層の推進」という四つの観点から成立。行政による予防対策のみならず、都民・事業者・行政の連携を図り、危機管理に重点を置く応急・復興対策をも含めた、総合的な震災対策をめざしている。

 条文の中には、知事の責務として、都民等の震災対策活動、また区市町村の震災対策事業に関し、必要な助成を行うことができるとの記載もあり、自助・共助の震災対策への都の積極的な支援の姿勢がうかがわれる。

 以上のような情勢の変化を踏まえ、現在、東京にある防災施設を具体的に見ていきたい。

東京都の防災システム

 震災だけでなく、風水害、火山災害など、東京に大規模な災害が発生した場合には、都知事を本部長とする東京都災害対策本部が組織される。東京都災害対策本部は、区市町村の災害対策本部、東京消防庁、警視庁、各指定地方行政機関、各指定公共機関、各指定地方公共機関と連携して災害対策にあたる。その砦となるのが、新宿区西新宿の都庁第一本庁舎にある「東京都防災センター」(平成3年オープン)である。関東大震災級の地震にも耐えられる耐震設計で、備蓄燃料のみで3日間、センターで必要な電力を供給できる自家発電装置がある。メインの災害対策本部室は面積413平方メートル。庁舎の8階と9階を吹き抜けにし、107名が一箇所で会議できるよう、2面の200インチスクリーン、地図標示盤、状況標示盤が壁面に設置されている。

 このほか、災害情報システム、AVシステム、地震被害判読システム、地震計ネットワークシステムを備えた指令情報室、防災行政無線を備えた通信室、夜間・休日の防災連絡業務をつかさどる夜間防災連絡室、防災機関室、仮眠室等があるほか、都庁舎の屋上には緊急時の移動・搬送用のヘリポートがあり、新宿周辺の被害状況を把握するための屋上カメラ、被災地の情報を収集するための衛星中継車や移動多重無線車等を有する。また、要員確保のため、徒歩30分圏内に約200戸の災害対策職員住宅を配置している。

 また、立川市緑町には、東京都防災センターの指揮下に置かれた「東京都立川地域防災センター」がある。こちらは、南関東地域に広域的な災害が発生した場合を想定して国が整備を進める、立川広域防災基地の構想を受け、そのエリア内に多摩地域の防災拠点の一つとして建設された。防災棟(地下2階、地上4階)と住宅棟(地下1階、地上10階)とがあり、東京都災害センターのバックアップ機能を持つ電算機室、大型スクリーンや複数のモニターを備えた災害対策室、通信室、一時避難室(体育室)、会議室、仮眠室、倉庫(食糧・生活必需品や医療資機材等、救援物資の備蓄)、災害対策職員住宅等を有する。

展示・体験コーナーを有する地域防災施設

 以上二つの施設は、災害時に中枢的役割を担うことを主目的とする防災センターであり、平常時の一般利用はできない。だが、各地域には、防災活動のPRや、一般の防災意識の向上を図るため、展示・体験コーナーを設けた防災施設がいくつかある。

 東京消防庁が都民の防災体験学習施設として設置している「都民防災センター」(防災館)もその一つで、池袋、立川、本所の三箇所にある。このうち最初に建てられたのは豊島区西池袋にある「池袋防災館」(昭和61年オープン)で、コーナーとして、初期消火、煙の中の避難、地震時の防災行動、119番通報、救急処置等が疑似体験できるほか、消防設備、防火用品等が展示されている。

 立川市泉町の「立川防災館」(平成4年オープン)は、上記のような体験コーナーに加え、地震の模様や地震時の模範行動を映像で見せるミニシアターを設置。墨田区横川にある「本所防災館」(平成7年オープン)は、さらに直下型地震をテーマにしたドラマを上映する3Dシアターや、立体映像や振動する座席等で地震や風水害を疑似体験できるコーナー等がある。

 また、区や市の防災センターでも、積極的に展示・体験コーナーを設置しているところがある。区や市レベルでは東京で初めて建設された北区西ケ原の「東京都北区防災センター」(地震の科学館/昭和59年オープン)をはじめ、品川区広町の「品川区防災センター」、目黒区中央町の「目黒区防災センター」(地震の学習館)等には、展示のほか、地震、煙、初期消火等の体験コーナーがある。このほか、荒川区荒川の「荒川区防災センター」、西東京市中町の「防災センター」等では、防災資機材の展示やビデオ・図書の閲覧等のコーナーを設けている。

 先の防災館の入館者は、平成7年の阪神・淡路大震災を機に激増した。展示・体験機能を持つ施設は、住民の防災への関心の高まりの大きな受け皿となっているようだ。今後建設される各地域の防災センターにおいても、防災教育機能の充実は決して無視できないものと思われる。

防災都市を支える拠点づくり

 さて、防災都市を支える拠点は、多くの機能を集約させた防災センター以外にもさまざまある。例えば、災害時の消防水利を確保するための給水施設。罹災者への応急救護体制を迅速にとるための救急医薬品や資機材、食糧、生活必需品を準備した備蓄倉庫。防災時の避難場所として整備された学校や公園等。しかし、いずれの場合にも火急の時に住民が迅速に防災行動を起こすためには、平常時からコミュニティに溶け込んだ施設であることが望ましい。

 そういった意味では、墨田区向島(一寺言問地区)に点在する防災給水施設「路地尊」は注目に値する。これは、屋根に降った雨水を地下の貯水槽に貯め、手押しポンプでくみ出して使う、雨水利用の防災給水施設。地元住民による「一寺言問を防災のまちにする会」が考えた防災街づくり計画から生まれ、区が同地区五箇所に設置し、住民が管理しているもので、普段から近所の植木の水やりや道路の打ち水、子供達の水遊び、併設された有機栽培の畑(防災広場)への利用、リサイクルの空き瓶や空き缶を洗うため等に使われ、親しまれている。墨田区では、同じシステムのものがほかの地区でも九箇所に設置された。

 路地尊には、「災害時には避難路になり、通常は地域の広場になる路地を尊ぼう」との思いが込められているという。この路地尊の例に限らず、おそらく今後の地域の防災施設には、防災における自助・共助の理念を浸透させるためにも、災害時における機能だけでなく、日常的に住民が慣れ親しみ、自ら進んで防災意識を高め、積極的に防災活動に参加したくなるような、魅力ある機能が求められるようになるのではないだろうか。


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